vol.6「長期円安」①

SNSなど、一部ではドルの崩壊などと囁いている人もいますが、現状を見るとまだまだドル一強時代であることは覆しようのない事実です。日本政府が円安を阻止するために、4月末から5月2日にかけて9兆7885億円の為替介入をしました。日銀が保有しているドルを売って円を買う行為を、アメリカ政府の了承を得て行っていると推測されます。しかし、いくら介入しても焼け石に水で、すぐに円安になり、その流れを食い止めることはできていません。
私は、今後3年以内に1ドル180円台の時代が来ると予想しています。根拠は2つあります。一つはアメリカと日本の金利差です。2024年5月現在、日米金利差は3.5〜4.5%です。通常、金利が高いところにお金を預けたいと思いますし、金利の高い国の債券を買いたいと考えます。ゆえにドルが買われ、ドル高になります。もう一つは、日銀がマイナス金利政策をやめて金利の引き上げに踏み切ったことです。金利が上昇すると、金利が低い時に発行された円建て債券の価値は下落します。誰しも高い金利の債券の方を買いたいからです。価値が高い時は、蜂蜜に群がるアリのように集まってきたお金が、価値が下がるとなると蜘蛛の子を散らすように去っていくのです。債券市場は、株式市場の数百倍の取引量があると言われていますから、日本から大量のお金が去っていくと、円は更に価値を失うことになります。
金利の格差以上に、債券市場が為替を動かす大きなファクターなのです。アメリカは利上げにより債券価格が下落しても強いドルを保っているのに対し、日本は利上げによる債券価格の下落で円安のスピードを速めることになるでしょう。
今秋の米大統領選でドナルド・トランプが勝利すると、ドル高は製造業にとって好ましくないと考えている彼は金利を下げてドル安を仕掛けてくるでしょう。しかし、金利を下げると米国債の価値は上昇しますので、更にアメリカにお金が集まり、ドル高円安は加速すると言われています。
こういったことから、手持ちの円資産のいくらかをドル定期にしたり、投資はドルを基本にするなど、長期の円安を考慮して資産運用をする必要があると考えます。
地主の参謀ニュースレター「回帰」2024年7月号掲載
