Vol2.「外貨保有の必要性」

投資の鉄則として「分散」があるが、私は特に通貨の分散は必要不可欠だと思っている。しかし、実際には、ほとんどの日本人が日本円のみで資産形成をしているように思う。

戦後、日本は固定相場制の1ドル360円で復興をスタートさせた。

今と比較するとかなりの円安である。1950年に朝鮮戦争が勃発したことで、日本は朝鮮特需により大きな利益を上げ、その後も家電や車の輸出産業の成長に円安の力も加わり、一気に経済を成長させることに成功した。急激な経済成長の中、外国為替相場の需要と供給のバランスを保つため1973年に変動相場制に移行し、2012年の1ドル75円という円高の時代まで62年もの間、円高トレンドが続いた。

円の価値が上がる状況下で、日本円以外の通貨を保有することに考えも及ばなかったのは、至極当然のことかもしれない。

しかし、昨年は1ドル151円と急激に円安が加速し、為替トレンドに変化が現れた皆さんは、今後円の価値がどうなるか予測しているだろうか?私は、しばらくは円安トレンドが継続すると考えている。最近では人民元の国際決済取引の利用が増加し、いずれ米ドルに取って代わるのではないか、との声もちらほら聞こえてくるが、世界貿易決済における通貨の比率でみると、米ドル83.71%、人民元4.5%、日本円1.76%と、まだまだ圧倒的に米ドルが強い。終戦後のような強さはないにしても、米ドルは世界の基軸通貨であり、日本円と比較すると米ドルの価値はまだまだ堅調である。

寂しいことではあるが、日本の国力は1990年以降、衰退の一途を辿っている。その大きな要因は、言うまでもなく人口の減少と高齢化であるが、それ以外にも技術革新の遅れによる一部産業の国際競争力の低下などがある。一方、移民政策を取っているアメリカは、今後も人口は増加することが見込まれており、国力の差は開くばかりである。通貨の価値に大きな影響を与えるとされる国力が低下している国の通貨のみを保有することは、大変危険なことである。

現在、日本円のみで資産運用をされている日本国民は、外貨保有率を上げて資産運用することをぜひ考えるべきである。

2023年7月 株式会社focus 渡部 浩